memento mori

私の母はもう90を超えている。私がいい年なのだから,驚くことはない。その母が心臓にペース・メーカーを入れたのは,もう20年ぐらい前だ。詳しくは忘れたが,心臓がおかしくて倒れ,ペース・メーカーが必要な状態になった。

後で聞いた話では,ペース・メーカーを入れたら死ななくなるのではないかと心配したらしい。で,医師に訊き,それでも心臓が止まるときは来ると教えられて安心したという。

以来,私は毎日欠かさず,電話している。おそらく年間に10日も電話をしない日はない。世界中のどこにいてもかけている。日本への通話が定額に収まるプランを探してかける。

年老いた母は,父と二人暮らしだが,私たち子どもとは離れて暮らしている。みんな忙しい。なかなか会いにも行けない。電話で声を聴くこともなければ,寂しさはいや増すだろうと思って毎日かける。

最近はいよいよ心臓がおかしいらしい。よく止まる。体力も落ちてきて,横になっていることが増えてきた。

毎日,「また明日かけるよ」と言って電話を切るが,これが最後になるかもしれないとそのたびに思っている。明日なんてあるかわからない。だから,潔く今を生きるのだ。Memento Moriとは「死を忘れるな」というラテン語だが,私はそれを「生きてるだけで,ありがとう」と訳す。



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