裸の王様は偉い

「裸の王様」というお話がある。英語ではThe Emperor’s New Clothes (皇帝の新しい服)だ。アンデルセン童話らしい。この話が昔から好きではなかった。誰かを小ばかにする話は,楽しいものではない。もちろん,特権階級の傲慢さと無教養ぶりを揶揄する精神はわかるし,私の得意とするところでもある。だが,楽しい話とは思えなかった。

“The naked emperor”, stencil graffiti by Edward von Lõngus. Kitsas (Narrow) street in Tartu, Estonia.

ふと思った。実は,この人物はとても思いやり深い人間で,仕立て屋に気を使い,その苦心に対する感謝の現れとして,対価を払い,どうどうと歩いて見せたのではないか,と。

どんなに周囲から嘲笑されたところで,自分の地位は安泰だとしたら,そうではなくても,本当に自尊心があり,思いやりがある人ならば,自分が嘲笑されても,騙されたふりをするのではないだろうか。

そして,その立派さを理解できる者はほとんどいない。世間などそのようなものだ。

それはよいとして,銀ギラに着飾られて恥ずかしがりもしない人間を見ていると,どこに謙虚さや羞恥心を捨ててこれたのかと揶揄したい気にもなるが,もしかしたら,賢明にも,自分に与えられた滑稽な立場を演じているだけかもしれない。たぶん勘ぐりすぎだ。



投稿日

カテゴリー:

投稿者:

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です