トランプが告訴された件 階層格差と不正義について(追記あり)

この記事がわりとわかりやすかったです。

Donald Trump arrest: Bragg outlines ‘catch and kill’ scheme involving two women | Washington Examiner

罪状認否の後に,検察官のブラッグさんが記者会見を開いていて,今朝,それをLiveで少し見ました。彼が強調していたのは,これが「ホワイト・カラーの仕事」だということです。

訴えられた罪状は,「不倫隠し」ではありません。そんなことは刑事罰になりえません。日本の報道各社がそのような報道の仕方をしていて,残念に思います。

訴えられた罪状は,直接的には,34件のビジネス文書記録の改ざんで,それが間接的に選挙法違反になるものだということです。自分の犯罪行為(選挙法違反)を隠す目的で様々な記録を改ざんしたことが,しかも34件もしたことが,NY州検察として看過できない深刻な違法行為だという判断です。

私は法律家ではありませんので,一般常識としてわかることを述べていますが,アメリカの場合,自治体(この場合,NY市)と,州政府,そして連邦政府の三つの層で法律があり,それぞれの法律違反についてそれぞれの検察が告発するかどうかを判断します。

今回は州政府です。選挙法違反はどうやら市と連邦の犯罪のようです。連邦は選挙法違反で特別検察官がかつて捜査しましたが,告発はしませんでした。おそらくこれからもされないでしょう。市の方は私は知りません。

もう1つ,大切だと私が思うことは,今回,トランプが告発された事実に基づいて当時の彼の代理人弁護士であったマイケル・コーエンさんが告発され,有罪になり,刑に服したこととの関連です。

したがって,今回もトランプ・チームは,口止め料を払ったことなどの事実関係については争わないでしょう。問題は,今回告発された文書偽造が,大統領候補であった人物の行為として,そして大統領を務めた人物の行為として,有罪に値する重大な犯罪行為かということでしょう。(これは,かれのチームがどういう戦術をとるか私のような素人にはわかりませんので,憶測です。)

この点について,NY州検察は,看過できない「ホワイト・カラー」の悪事だ,と判断したのです。立派な身なりで高収入を得ている人々が,自分の犯す「些細な」犯罪を隠すために,巧妙に文書を書き上げて,その事実を公の目から隠す。こういうことが許されるのか,ということを問うたのです。

つまり,この裁判は「不倫事実」がどうのこうのという日本の報道各社が報じているような陳腐なことではなく,人間社会のどこにでも見られる,階層関係に潜む不正義をどうアメリカ社会が判断するか,という裁判だと私には思われます。

そして,私たちにとって,少なくとも私にとって大切なのは,裁判でトランプが有罪になること以上に,このような不正義についての,真面目な議論が積み上げられていくことです。


(以下4/5 夕刻に追記)

https://www.nytimes.com/2023/04/04/us/politics/trump-bookkeeping-fraud-taxes.html

New York Timesの記事を読みました。選挙法違反は連邦と州レベルで問われる可能性があるようです。それがうまくいくかは怪しいそうです。文書改ざんを重罪として扱うには,別の犯罪隠しのためだという理由付けが必要とのことで,その別の犯罪として何を検察側が用意しているのかは,今のところ不明のようです。脱税かもしれない,とされています。

このNew York Timesの記事も関心は,トランプが有罪かどうかにあって,私には頓珍漢に見えました。問われているのは,トランプを有罪にできないような正義はでたらめではないか,そのような正義は不正義ではないか,という点だと思います。

そしてそれはおそらく本当です。正義なんてそんなもんです。だから不正義を明らかにしていく努力が大切なのです。正義を称賛することではなく。


George Conway: There’s no question it was a cirme under New York state low.

ジョージ・コンウェイさんは共和党のストラテジストで,先日離婚した元お連れ合いがトランプの側近であるにもかかわらず,トランプが在職中からトランプたたきをしている人ですが,私と一部重なることを言っています。明白な犯罪なのに,なんでみんな告訴に値するのかなんて問題にしているんだ,みたいなことです。(4/5 JST22:25 追記)



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